企画展

吉行淳之介展

1998年10月17日(日)~11月29日(日)

昭和43年から平成6年に亡くなるまで世田谷区上野毛に住んだ吉行淳之介は、新興芸術派作家・吉行エイスケを父、美容家・あぐりを母に大正13年に生まれ、戦火の中で青少年時代を送りました。『原色の街』などで三度芥川賞候補になり、昭和29年『驟雨』で受賞、折しも肺切除手術のため入院中で、その後生涯にわたり病気に苦しめられながらの執筆人生を送ることになります。 このころから、〈第三の新人〉と称される同時代の仲間、安岡章太郎、遠藤周作らと親交が始まります。 童謡に触発された『寝台の舟』『鳥獣虫魚』『不意の出来事』、『娼婦の部屋』などの珠玉の短編群、エンタテインメント長編『すれすれ』で初の週刊誌連載、『砂の上の植物群』『星と月は天の穴』『暗室』を経て、連作『夕暮まで』などの作品では、男と女の性を通して、人間の本質を鋭敏かつ繊細な筆致で深層から描いていきます。 さらに井原西鶴『好色一代男』などの現代語訳、ヘンリー・ミラーの翻訳も手掛け、交友も広く対談の名手としても知られています。 吉行文学は〈性〉を描くことで〈生〉の深淵を浮き彫りにします。戦火に踏みつぶされた青春を原点に、時代にも同調せず、文壇の中でも先達と後続にはさまれ、病と闘いながら、都会的ダンディズムを貫いて書き続けた作家の生き方が投影されているのです。 本展では、原稿、初版本、書簡、写真、愛用品など貴重な資料約300点で吉行文学の全貌に迫ります。