企画展

井上靖展

2000年4月29日(土・祝)~6月11日(日)

清冽な詩情と豊かな物語性を湛えた作品世界で読者を魅了し、今なお強い支持を得ている作家・井上靖(明治40年~平成3年)。昭和25年「闘牛」で芥川賞を受賞、42歳にして作家生活を出発させますが、旺盛で幅広い活躍を続け、82歳で生涯を閉じるまで長篇小説74、短篇小説270、詩462、紀行文・エッセイ・評論など2000点以上の膨大な数の作品を残し、最期まで筆力の衰えを知らない稀有の作家でした。
特に、井上靖が作家としての評価を決定的なものとしたのは、昭和32年発表の本格的歴史小説の第1作「天平の甍」からでしたが、それはちょうど井上靖が世田谷に転居した時期でした。その後も「桜蘭」「敦煌」「蒼き狼」「おろしや国酔夢譚」「孔子」など、井上文学全体の中でも重要な意味を持つ壮大なスケールの歴史小説を次々と発表します。世田谷は井上靖にとって創作の拠点であり、また終生愛し続けた終の住処でもありました。
本展では、これらの歴史小説、特に靖が大学時代から憧れてやまなかったシルクロードにまつわる作品を軸にしつつ、現代小説、自伝小説、詩業などもあわせて、貴重な資料約400点でご紹介します。
この中には、綿密な取材・創作メモ、靖が晩年まで何度も足を運んだシルクロドへの旅日記、さらに習作時代に執筆した未発表作品(探偵小説・ユーモア小説・時代小説・戯曲)の原稿、作家や美術家たちとの交友を示す書簡など、今後の井上靖研究の指針となる新発見・初公開資料も多数含まれています。