企画展

没後30年 志賀直哉展

2001年10月6日(土)~11月11日(日)

『城の崎にて』『小僧の神様』など優れた短編小説を遺した志賀直哉は、強いリズムに貫かれた簡潔で美しい文体により、文学表現に独自の世界を切り開きました。特に、唯一の長編ともいえる『暗夜行路』は、近代日本文学を代表する作品として位置付けられています。この小説は前身の草稿から26年をかけて完成し、それまでの志賀作品の集大成として、全てのテーマが織り込まれています。志賀直哉の文学は、強い倫理感と徹底した人生観照に裏付けられた格調の高い文体の上に築かれ、その後、多くの作家の指標となったのです。
昭和15年から23年にかけて世田谷新町に居を構えた直哉は、敗戦直後の第一作『灰色の月』『蝕まれた友情』などを発表。還暦を過ぎてからの志賀的世界の健全を示しました。近隣には直哉とともに奈良から移り住んできた画家の若山為三や、英文学者で星の研究者として知られる野尻抱影と翻訳家の中村白葉、そして木工家の林二郎や画家の緑川廣太郎らが居を構え、また、以前成城に住んでいた武者小路実篤や、豪徳寺の広津和郎、北沢の網野菊、後に北沢に住まう長与善郎、そして里見弴や瀧井孝作らが頻繁に志賀邸を訪れていました。
本展では、志賀直哉の人と文学を中心に、世田谷にゆかりのある「白樺」や志賀山脈の人々、近隣の芸術家との交流を原稿、書簡、創作ノート、絵画、写真など約300手㎜の資料を展示し、志賀直哉の精神世界をご紹介します。