企画展

父からの贈りもの 森鷗外と娘たち展

2010年10月2日(土)~11月28日(日)

わが国の近代文学の興隆期に偉大な足跡を残した森鷗外(もり・おうがい 1862-1922)。明治国家の中枢で軍医、官僚として生きながら、おびただしい数の外国文学を翻訳、紹介しつつ多種多様な題材をテーマに創作の筆を執り、新しい時代の思想や精神を表現するにふさわしい日本語の文体を作り上げ、あとに続く者たちに多大な影響を与えました。
いっぽうで家庭人としての?外はきわめて子煩悩な父親でした。その濃やかで大きな愛情に包まれて育った子どもたちはそれぞれに個性を伸ばし、森茉莉と小堀杏奴の二人の娘はやがて小説家・随筆家の道を歩むことになります。
姉の森茉莉(もり・まり 1903-1987 代沢、経堂に居住)は、2度の離婚ののち50代なかばでデビュー、『贅沢貧乏』『甘い蜜の部屋』等で絢爛な美の世界を展開し、特異な存在の作家となりました。片や、妹の小堀杏奴(こぼり・あんぬ1909-1998 梅丘に居住)は20代で『晩年の父』を上梓、随筆の分野で活躍しながら、夫である画家・小堀四郎を生涯献身的に支えました。ともにデビュー作は父の思い出であり、その後も父・鷗外は姉妹の作品の重要なモティーフとなりました。決して平坦とはいえない彼女たちの歩みの中で、心の拠りどころとなったのは、大好きな父、「パッパ」に愛されたという確かな記憶だったのかもしれません。
姉妹とゆかりの深い世田谷で開催するこのたびの企画展は、<父性>をキーワードに父・森鷗外と森茉莉、小堀杏奴それぞれの軌跡と作品に迫る初めての試みです。