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文学を体験する空間「世田谷文学館」


これまでの活動報告

「超ショートショート講座」レポート

2015年12月4日

小学校高学年~中学生が参加し、奇想天外な超ショートショート小説と、ヘラだけで描いた抽象画の挿絵をつくりました。
>くわしく(PDF 1.19MB)
(2015年8月22,23日開催)
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どこでも文学館「世田谷ロケットⅡ」レポート

2015年11月26日

宇宙飛行士やロケットについての話を聞いた後、身近な素材を使ってロケットを作り、発射実験をしました。
>くわしく(PDF 585KB)
(2015年8月8日開催)
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ネイチャーコラージュ

2015年7月9日

芦花公園で採集できるどんぐり・種などでコラージュをつくり、ブローチなどのアクセサリーを制作しました。
>くわしく(PDF 1.29MB)
(2015年6月27,28日開催)
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岡崎京子展関連
小沢健二ライブ

2015年5月14日

 「岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ」の会期最終日曜日である3月29日、シンガー・ソングライターの小沢健二さんによるライブを行いました。
 小沢さんは岡崎京子さんの友人であり、岡崎さんが1996年5月に不慮の交通事故に遭われた際、真っ先に病院へ駆けつけたのが小沢さんと作家の吉本ばななさんでした。
 2010年に行われた小沢さんの全国ツアーの東京公演初日には、療養中の岡崎さんが会場に姿を見せ、小沢さんが終演時にそのことを観客に告げた出来事はファンの間で語り草となっています。
 そして、岡崎さんのこれまでの作家活動の全体を紹介する初めての展覧会となった本展に、現在アメリカに住む小沢さんが駆けつけてくださいました。
 1980年代の後半から90年代半ばにかけて、マンガの枠を超えてさまざまなメディアで活躍した岡崎京子さん。同じく80年代の終わりにバンド「フリッパーズ・ギター」でデビュー、さらに93年にソロ活動を開始し、絶大な人気を得てきた小沢健二さん。本展では300点以上の作品原画のほかに、岡崎さんが登場したファッション誌や音楽雑誌などさまざまな関連資料もあわせて展示しましたが、その中にはお二人が共演し、交友を深めるきっかけとなった雑誌なども含まれていました。
 今回のライブは、そうした岡崎さんの展示空間の延長として、同時代のカルチャーをともに牽引した小沢さんに登場していただくものとなりました。当日は、館内で展示をご覧になっていた方々を当館1Fにご案内し、岡崎さんのご家族や吉本ばななさんほか親しい方々を含め400人が、18:30から一時間強のライブに立ち会いました。
 曲目は次のとおりでした。

1「天気読み」
2「天使たちのシーン」
― 朗読「親」 ―
3「それはちょっと」
4「春にして君を想う」
5「神秘的」
― 朗読「友情という魔法の力」 ―
6「強い気持ち・強い愛」
7「流星ビバップ」
8「ドアをノックするのは誰だ?」
9「戦場のボーイズ・ライフ」
10「東京の街が奏でる」

 アコースティック・ギターで演奏する小沢さんの背後には、岡崎さんの描いたイラストが投影されました。これは小沢さんの妻である写真家のエリザベス・コールさんが展示室内で撮影した写真を、小沢さんのプロモーション・ビデオを数多く手がけた映像アーティストのタケイ・グッドマンさんがライブ・スイッチング(複数の映像をその場で切替えて演出)したものでした。

 ライブは小沢さんのソロデビュー曲である「天気読み」で始まり、続けて名曲としてファンに愛される「天使たちのシーン」が披露されました。1曲目の<新しいフレーズが君に届いたらいい>、2曲目の<愛すべき生まれて 育ってくサークル 君や僕をつないでる緩やかな 止まらない法則(ルール)>といった、これまでたくさんの人々の大切な瞬間を彩ってきた小沢さんの歌詞が、この日はあたかも岡崎さんに宛てて歌われているかのように感じられたことは、ライブに参加した方々も同じだったことでしょう。

 続いて「親」と題したテキストが朗読されました。現代の人間は10代の中頃から、まるで親なんていないかのように振る舞うが、それは社会において優秀な消費者としての生活を楽しむ(または苦しむ)時期と一致している。人は消費社会の中で他人を親のいない個人として扱う。だが人には選ぶことも交換することもできない親や家族という存在がいて、それを知ることで他人が立体的に見えてくる、といった内容が語られました。『pink』をはじめ消費社会を描いた岡崎作品にも、主人公の家族の姿が重要な部分として描かれています。岡崎作品の理解に厚みを与えるような朗読でした。小沢さんは最後に、岡崎さんには彼女の傑作たちに負けないような素晴らしい家族がおり、彼女を温かく見守っていると話されました。

 朗読をはさんだ3曲目は「それはちょっと」。結婚して家族を持つことへのためらいを歌ったこの曲では、サビの<それはちょっと>の部分を小沢さんが観客に預け、一緒に歌われました。現在結婚され一子を持つ小沢さんが歌うこの曲を感慨深く聴いたファンの方もいたことでしょう。
 続いて季節感あふれる選曲の「春にして君を想う」。この日、文学館のある芦花公園駅周辺も早い桜の開花を迎えていました。そして3年前に発表された新しい曲「神秘的」。日常的な風景が崇高な世界観へと繋がってゆく、小沢さんならではの美しい曲でした。

 小沢さんは続いて「友情という魔法の力」というテキストを朗読されました。あまり話をしない、しかし心の距離が近い、遠い友人。憧れのような気持ちで思うその友人の存在が、「僕らの中を刺激する。僕らに強くなることを誓わせる。笑うことを誓わせる」。友情について正しく意味づけたものを見かけないが、それは社会の根幹にあって計り知れない力を持つものであると語られました。
 友情をめぐる朗読に続けて歌われたのは、「強い気持ち・強い愛」でした。

 強い気持ち 強い愛 心をギュッとつなぐ
 幾つの悲しみも残らず捧げあう
 今のこの気持ち 強く強く強く
 長い階段をのぼり 生きる日々が続く
 大きく深い川 君と僕は渡る

朗読で語られた「僕らに強くなることを誓わせる」、岡崎さんという遠い友人に捧げるような力強い歌声でした。
 続いて、東京スカパラダイス・オーケストラの沖祐市さん、GAMOさんという小沢さんの友人も飛び入り参加して、弾むような演奏に手拍子も起こり、「流星ビバップ」「ドアをノックするのは誰だ?」の2曲を聴かせてくれました。
 そしてライブは、本展のサブタイトルの元にもさせていただいた、「戦場のボーイズ・ライフ」でクライマックスを迎えました。

 何度も君の名前を呼ぶ
 本当の心捧げて呼ぶ
 この愛はメッセージ
 僕にとって祈り 僕にとって射す光

曲の終盤に、小沢さんが<この愛はメッセージ…>と歌をそっと預けると、<祈り 光 続きをもっと聞かして>と観客の皆で歌い継ぎました。岡崎京子さんへ贈る、静かなコールアンドレスポンスが会場にこだましました。

 そして最後の曲、「東京の街が奏でる」が演奏されました。東京の変容をそれぞれに見つめてきた小沢さんと岡崎さんの長い年月や、時代を超えて人々の心をとらえる二人の作品について、思いを巡らせられる歌詞でした。

 壊れてしまったかつての天才たちが 嘘をつく
 東京の街のどこかで
 君と僕は うさぎのような目で見ている
 尊き時に本当が光る

 いつか友情は 虚しさの手をとり
 空へ昇る高熱 放つ 炎に変わる
 見つからない何かがある 場所を照らす
 
演奏を終えた小沢さんは、来場者や岡崎さんのご家族、スタッフへの謝辞を述べ、最後に岡崎京子さんの名前を叫ぶと、舞台を後にされました。

 岡崎京子さんは現在、ご自宅で療養を続けていらっしゃいますが、本展の開催にあたり、来場者へ向けたメッセージをお願いしました。そして、2年ほど前から練習を始めたという、視線追跡(アイトラッキング)の技術による入力装置を使ってお寄せいただいたのは、

 ありがとう、みんな。

というメッセージでした。本展にお越しになる多くの方々の気がかりは、岡崎作品の原画や資料を見られることとともに、あるいはそれ以上に、現在の岡崎さんの容態を気づかう思いであったことでしょう。岡崎さんのことばは、そうした来場者へ向けたこの上ないメッセージでした。

 小沢さんにも今回のライブ出演に先だって、本展図録に「みなさんの話は禁句」という長い文章を寄せていただきました。その文章は、偶然にも岡崎さんのメッセージと深く共振する内容のものでした。そこには次のように書かれています。

 でも、「みなさん」は、実は存在しない。
 「みなさん」は、実は数字だ。
 そういう他人に与える居心地の悪さ(笑)と、愉しさ。
 そういう潔さと、清らかさ。

それは、人気作家として作品を発表し続ける岡崎さんが、「みんな」「みなさん」という目に見えない存在といかに真剣に対話し戦ってきたかを、あらためて考えさせられる文章でした。そして岡崎さんと「みんな」との対話は、今も続いています。

 本展会期中、会場の出口に岡崎さんへ手紙を書くコーナーを設けたところ、最終的に約2000通ものメッセージが寄せられました。その多くは、岡崎作品が自分の中にどれほど深く息づいているかをせつせつと綴ったものや、療養中の岡崎さんへのエールを送るものでした。
 このたびのライブは、そうした多くの来場者の岡崎京子さんへの感謝と激励の思いを形にするものとして実施したものです。ライブの様子は映像に記録され、岡崎さんのもとへ届けられました。遠くアメリカから駆けつけ、「みんな」の思いを形にしてくださった小沢健二さんに感謝いたします。
 ライブから2日後、3月31日に「岡崎京子展」は無事会期を終了し、北海道から沖縄まで、全国各地から2万4千789人もの多くの皆さまにお越しいただきました。本展をいま開催することの意味を与えてくださった、ご来場の皆さまの思いと、岡﨑家やご関係の皆さまのご協力に、あらためて感謝いたします。最後に、皆さまからの2000通のメッセージはライブ映像とともにお手元に届けられ、岡崎京子さんがとてもお喜びになったことを、ここに報告させていただきます。
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