山崎まどかさん(文筆家)に聞いた
「アメリカのハイスクール」をテーマに選ぶ
写真集3冊
2020年12月18日
山崎まどか(文筆家)
1970年、東京生まれ。文学、映画、音楽、ファッションなど、様々なカルチャーに通じ、雑誌他多くのメディアに寄稿、執筆活動を行う。翻訳書に、タオ・リン『イー・イー・イー』、B・J・ノヴァク『愛を返品した男』、レナ・ダナム『ありがちな女じゃない』など。
70年代からロング・アイランドの高校で写真を教えていたジョセフ・スザボが、自分の生徒たちを撮った作品を収録。ダイナソーJr.のジャケットとなったくわえ煙草の少女の写真があまりにも有名だが、他の作品からも10代独特のアンニュイな雰囲気が溢れている。はしゃいでいるのと同時に虚しさを感じているような表情の数々。キャメロン・クロウが寄稿した序文の結び、「未来永劫、変わらないのはハイスクールだけだ」という言葉が全てを物語るかのようだ。
アメリカのティーンにとって特別なイベントといえば、学年末に行われるダンス・パーティのプロムだ。ここに収録された1940年代から80年代のプロム写真からは、特別な夜に寄せる期待と高揚感が伝わってくる。時に滑稽なタキシード姿。ドレスを着てお洒落している女の子たち。会場のブースでぎこちなく抱擁を交わし、ポーズを取って微笑む2人。10代のハイライトを迎えた喜びと、この夜が過ぎたら大人になるしかないのだというせつなさが写真の中で交錯する。
1984年の16歳の誕生日に学校で亡くなり、ハイスクールに囚われて「学校の幽霊」(スクール・スピリット=愛校精神とかけてある)になってしまった少女の独白からなるダグラス・クープランドの短編と、ハイスクールの学年アルバムを素材にしたピエール・ユイグのコラージュを組み合わせた書籍。アルバムの寄せ書きに添えられたフレーズの数々とモノクロの学園写真が、まるでアドレッセンスの墓標のようだ。