嵐山光三郎さん(作家)が選ぶ安西水丸の3冊

本と輪 この3冊

嵐山光三郎さん(作家)が選ぶ

安西水丸の3冊

2021年4月28日

嵐山光三郎(作家)

1942年静岡県生まれ。雑誌編集者を経て、作家活動に入る。1988年、『素人庖丁記』により、講談社エッセイ賞を受賞。『悪党芭蕉』が2006年に泉鏡花文学賞を、2007年に読売文学賞を受賞した。『文人悪食』『文人暴食』『文人悪妻』『文士の料理店』『昭和出版残侠伝』『美妙』『芭蕉という修羅』『漂流怪人・きだみのる』『生きる!』など著書多数。

1
『青の時代』 安西水丸

水丸がニューヨークのオーラを背負って平凡社へ入社してきたのは1971年(29歳)でした。物静かな殺気と洗練された薄情さがあり、たちまち感電しあって青白い閃光がはじけた。その孤愁をつむいで南伸坊編集の雑誌「ガロ」に連載し、1980年に『青の時代』(青林堂)として刊行された。解説は嵐山が書いた。水丸が少年時代をすごした房総半島、千倉の町が舞台で、「ミズマルとは、な、なに者であるか」と文芸的漫画界(そんなものがあった)が大騒ぎになった。「70年代の空漢」が漂う記念碑的名作です。

2
『春はやて』 安西水丸

「ガロ」に掲載された漫画で『青の時代』未収録作品を集めたオリジナル版。表題作となった「春はやて」ほか「雪どけの頃」「黄トンボ」「終夏鉄道」「冬町」など十三編は、水丸の腕が上達する寸前のむくな透明感があり、痛々しいほど純な一本の線が見どころです。海辺の燈台、すすきの原を走る夜汽車、しんしんと降る雪の町。そして女。風景とエレジーをつなぐ女たちはぞくぞくするほどセクシーですね。映画的なコマ割りで見開きになる構図が新鮮です。女たちが水丸を啓発するのですよ。

3
『アマリリス』 安西水丸

水丸は1969年2月からニューヨークで二年間をすごした。ベトナム戦争が底なし沼のただなかにあり「LSDに狂っていた」時代を背景にした七つの短編集。NY情痴小説集だが、新潮文庫に収録されたとき、水丸と連れだってニューヨークで吟行した。「新NY者」(フジテレビ)という番組で、水丸がますみ夫人と住んでいたアパートを訪ねた。古ぼけたアパートの屋上に薔薇が咲き、雪が降ってきた。「貸部屋の薔薇凍て風の音を聴き」(嵐山)。「降る雪やふた昔前の声を聴く」(水丸)がそのときの吟です。

(出典)ブックリスト「本と輪 この3冊」vol.9 2021.4

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各分野でご活躍の皆さまに、世田谷文学館が用意したお題に対して、3冊の本を挙げていただきました。ロゴマークのデザインは、クラフト・エヴィング商會さんです。当館で不定期発行しているブックリスト「本と輪 この3冊」からのご紹介です。子ども向けの本から、洋書や哲学書まで、旅の本、食の本、写真集など幅広い分野から選んでいただきました。意外なテーマも出てきます。当館ライブラリー〈ほんとわ〉の雰囲気を、ホームページでも味わっていただければと思います。だいたい毎週金曜日に更新していきますので、どうぞお楽しみに。

※選書の入手について:書籍により、なかには現在入手が難しいものもあります。文庫版や古書、図書館などでも探してみてください。

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